中村七之助が女形を選んだ理由とは|美の秘密と玉三郎の教え・結婚の真相

中村七之助が女形を選んだ理由とは|美の秘密と玉三郎の教え・結婚の真相にまつわる興味深い視点を分かりやすく発信ます。

中村七之助の女形を語るうえで、五代目坂東玉三郎の存在を外すことはできません。当代最高峰の女形として君臨する玉三郎は、七之助にとって単なる先輩俳優を超えた「美の絶対的指標」であり、師匠そのものです。

ふたりの師弟関係が深まった契機は、玉三郎が演出・主演を務める舞台への抜擢でした。玉三郎は七之助の資質を高く評価し、自身の部屋子同然に稽古場へ引き入れ、指先の角度一つ、視線の配り方、息の吸い方に至るまで、妥協なき指導を施しました。玉三郎が伝えたのは表面的な女性のモノマネではなく、「舞台空間の余白をどう支配するか」「役の内面にある悲哀や狂気をどう気品へと昇華させるか」という美学の根本でした。

その象徴となったのが、屈指の難役として知られる『壇浦兜軍記』の阿古屋です。琴、三味線、胡弓の三曲を舞台上で実際に演奏しながら傾城の誇りを表現しなければならないこの大役は、長年にわたり玉三郎の独壇場とされてきました。しかし、玉三郎は自らの芸を後世に遺すべく、七之助や中村梅枝(現・時蔵)、中村児太郎らに手取り足取り伝授しました。七之助が見事に阿古屋を勤め上げた際、劇界からは「玉三郎の美意識が正統に受け継がれた」と惜しみない賛辞が送られました。

高橋 健太

高橋 健太

ライフスタイル編集者

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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