絵本『なまえのないねこ』で大人が号泣する理由と感動の結末ネタバレ
主人公は、街の片隅で暮らす1匹の緑色の目をしたキジとら猫。彼には名前がありません。八百屋の「トマト」や靴屋の「レオ」、喫茶店の「マスター」など、街で出会う飼い猫たちには皆、人間から愛情を込めてつけられた誇らしい名前があります。さらに街を見渡せば、花や自転車、車、看板に至るまで、あらゆるものに固有の呼び名が存在していました。
「ぼくも、なまえがほしいな」――そう願った猫は、神社で出会った寺の猫から「自分で好きな名前をつければいい」と助言されます。しかし、「おい」「こら」「あっちへいけ」「しっ」と、人間たちから投げつけられる言葉ばかりを思い出してしまい、どれもしっくりきません。
物語が大きく動くのは、冷たい雨が降りしきるある日の午後です。雨宿りをしていた神社の軒下で、猫は傘を差した1人の小さな女の子と出会います。女の子は猫の濡れた体を気遣い、じっとその瞳を見つめました。そして、猫の美しい緑色の瞳に魅せられ、こう語りかけます。
「きれいな め。きみのみどりの め、メロンソーダの いろ」
次の瞬間、女の子の口から紡ぎ出された言葉こそが、この物語のクライマックスです。女の子は猫を優しく抱きしめ、こう告げました。「おうちに おいで。メロンソーダの めをした、めろん。きょうから あなたの なまえは、めろんよ」。
名前をもらった瞬間、猫は身体の奥底から温かい感情が満ちてくるのを感じます。そして作品は、読者の胸を強く打つ最後の言葉で幕を閉じます。自分が本当に欲しかったのは、耳に心地よい言葉の響きではなく、「じぶんの なまえを よんでくれる ひと」だったのだと気付いたのでした。
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