愛犬が水をよく飲むのは病気?危険な飲水量と受診目安を専門家が解説
SNSや知恵袋、飼い主コミュニティの投稿を精査すると、多飲という症状に対する認識不足から対応が遅れ、深刻な後悔に直面する飼い主の生々しい告白が数多く確認されます。
「最近やたらと水を飲むボウルが空になるのが早いと感じていたけれど、夏場だから暑いのだろうと軽く考えていた。ある朝突然ぐったりして倒れ、救急搬送したときには糖尿病性ケトアシドーシスを発症しており、集中治療室で数日間生死をさまよった」(50代・トイプードルの飼い主)
「シニア期に入り、おしっこの失敗が増えて水をよく飲むようになったが、年のせいだと片付けていた。動物病院の定期健診で発覚したのは腎不全のステージ3。もっと早く検査を受けさせていれば、残された腎機能を温存できたはずなのにと自責の念が消えない」(40代・柴犬の飼い主)
こうした現場の悲痛な声に共通しているのは、老犬が水をよく飲む理由を単なる老化現象と片付けてしまうバイアスです。確かにシニア犬は腎臓の濃縮能低下や抗利尿ホルモンの分泌減退によって水分要求量が増加する傾向があります。また、認知機能不全症候群(犬の認知症)による強迫的な重複飲水も見られます。しかし、基礎疾患が存在するにもかかわらず「老犬だから仕方がない」と見過ごすことは、病気の進行を放置することに等しいと言わざるを得ません。
また、臨床現場で飼い主から頻繁に相談を受けるのが犬が水をがぶ飲みして吐く原因です。乾きに耐えかねて一度に大量の冷水を急速摂取すると、胃が急激に拡張されて迷走神経が刺激され、防御反射として吐き戻してしまいます。さらに深刻なケースでは、大量の水と空気を一気に飲み込むことで胃拡張・胃捻転症候群(GDV)の引き金を引くリスクや、巨大食道症などの通過障害が潜んでいる場合もあります。「飲んでは吐き、吐いてはまた飲む」というループを繰り返しているときは、消化管閉塞や急性膵炎などの重篤な急性疾患を強く警戒しなければなりません。