『Let It Be』本当の意味とは?「あるがままに」に隠された母の愛と解散の真相

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楽曲の冒頭で歌われる「When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me(僕が困難に直面しているとき、マザー・メアリーがやってきて)」というフレーズ。この一節をめぐっては、リリース直後から世界中で激しい論争が巻き起こってきました。キリスト教圏において「Mother Mary」といえば、イエス・キリストの母である「聖母マリア」を直接的に想起させるためです。

実際、当時この曲を聴いたジョン・レノンは強い違和感を抱き、「ポールは自分をキリストに見立て、聖母マリアの神聖な賛美歌でも書いたつもりなのか」と皮肉めいた批判を口にしました。ジョンが『Let It Be』のアルバム制作において、この曲の直前にわざと少女のようなふざけた声で「And now, we'd like to do 'Hark, the Angels Come'(さあ、天使がやって来る、をお届けします)」という冷やかしのイントロを挿入させたのは、有名な逸話です。

しかし、ポール本人の証言は一貫しています。「あれは完全に、僕の死んだお母さんのことなんだ」と明言しています。では、なぜあえてキリスト教の宗教画を想起させるような言葉遣いになったのでしょうか。そこには、意図せざる芸術的な二重構造が存在していました。

ポールが育ったマッカートニー家はカトリックとプロテスタントのルーツを持つ家庭であり、母メアリー自身が信心深いカトリック教徒でした。ポールにとって「母メアリー」への憧憬と、幼少期に刷り込まれた「聖母マリアの慈愛のイメージ」は、無意識のうちに混ざり合っていたと考えられます。ポール自身も後年の取材でこのように述べています。

「僕にとっては母の歌だけれど、世界中のクリスチャンや聴き手が『聖母マリア』として受け止めて救われるなら、それも素晴らしいことだ。曲が作者の手を離れて普遍的な祈りになることを、僕は歓迎しているよ」

加藤 愛美

加藤 愛美

エンタメ専門ジャーナリスト

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。

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