伝説の指パッチン芸人・ポール牧の狂気とお笑い史に刻まれた真相
ポール牧の真骨頂は、突発的なテレビタレントとしての顔だけではない。その根底には、浅草の劇場や色物舞台で泥水をすすりながら培われた、泥臭くも強靭な寄席演芸のスピリットが脈打っていた。ストリップ劇場の合間に演じる幕間コントで客の野次を浴び、いかに一瞬で酔客の注意を惹きつけるか——その極限の修羅場で生まれたのが、あの乾いた指の音だった。
若き日のビートたけしらの青春を描いた名作『浅草キッド』の世界観そのままに、浅草の猥雑なエネルギーを吸い込んで育った彼は、のちに日本喜劇人協会の理事を務めるほど演芸界の重鎮へと登り詰めていく。王道のコントを愛し、舞台の照明が消えた後も芸のあり方を後輩に説き続けた。しかし、舞台芸人としての高い自負と、テレビが求める「一発ギャグのアイコン」としての虚像とのギャップは、次第に彼の精神を苛んでいくこととなる。
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