青江三奈『伊勢佐木町ブルース』吐息の誕生秘話と歌碑の現在|昭和歌謡史の真相
『伊勢佐木町ブルース』を語る上で外せないのが、前奏の冒頭に響く「あぁん、あぁん」という艶めかしい吐息です。一聴すると即興のアドリブのように感じられますが、関係者の証言や当時の制作記録によると、極めて緻密なマーケティングと演出意図のもとに誕生した仕掛けでした。
本作の作詞を手掛けたのは、『月光仮面』の原作者としても知られ、後に数々のヒット歌謡を生み出した希代の劇作家・川内康範。作曲はムード歌謡の旗手である鈴木庸一、編曲は寺岡真三が担当しました。青江三奈は1966年に同じく川内康範が作詞した『恍惚のブルース』で鮮烈なデビューを飾っていましたが、さらなる決定打となるキラーチューンを模索していた制作陣が着目したのが、彼女の持つ天性のハスキーボイスと圧倒的な表現力でした。
レコーディング現場において、「夜の伊勢佐木町の気だるい色気と切なさを一瞬で聴き手に伝えるための導入」として吐息を吹き込むプランが浮上。当時、まだ20代半ばだった青江三奈本人はスタジオで強い気恥ずかしさを覚え、当初はためらいを見せたといいます。しかし、ディレクターや作家陣の熱心な説得を受け、腹を括ってマイクに向かった結果、奇跡的なテイクが収録されました。ハスキーでありながら湿り気を帯びたその息遣いは、単なる官能性を超え、夜の街に生きる女性の哀愁を見事に描き出す決定打となったのです。
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