本人の意思があってもなぜ拒むのか?臓器提供に揺れる遺族の真実
「本人の意向は知っていました。でも、先生の手で命の火を消すスイッチを押すような気持ちになったんです」。都内の病院で搬送された息子の看取りを経験した父親は、当時の心理をそう明かした。ドナー登録を行う若者は増加傾向にあるが、死の直前に直面した家族にとって、それは単なる紙の上の同意ではない。
家族が拒絶を示す最大の理由は、「脳死」という状態を感情的に受容できない点にある。心拍が停止した死とは異なり、脳死判定を受けた患者の身体はまだ温かく、人工呼吸器によって胸が動いている。身内から見れば「ただ眠っているだけ」に思える光景だ。その状態から臓器を摘出する作業は、遺族にとって「まだ生きている家族を自分たちの手で殺す行為」に感じられてしまう。この心理的ハードルこそが、真の拒絶理由として横たわっている。
医療従事者との対話不足も拒絶に拍車をかける。突然の事故や病で搬送され、事態を飲み込めないまま短時間で説明を受ける遺族は、パニック状態にある。命の救助から臓器提供への唐突なプロセス切り替えに対し、「見捨てられたのではないか」という不信を抱く事例も後を絶たない。
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