肩の前側の激痛はなぜ?上腕二頭筋長頭腱炎の真相と失敗しない治し方
臨床現場で最も多い誤診・誤認が、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩・四十肩)との混同です。両者は好発年齢(40〜60代)が重なり、肩が痛くて上がらないという主訴も類似していますが、病態生理とアプローチは正反対と言っても過言ではありません。
五十肩の本質は「関節包の全周性拘縮(フローズンショルダー)」であり、他人が腕を持ち上げても特定の角度でカチッと固まり動きません。対して、単独の上腕二頭筋長頭腱炎では、痛みを我慢すれば他動的には肩が可動域いっぱいに動くケースが目立ちます。最大の判別ポイントは「圧痛部位」です。結節間溝(腕の付け根の前側、骨の溝)を指先で押した際に飛び上がるような局所痛がある場合、五十肩ではなく長頭腱の炎症を疑うべきです。
日本整形外科学会の臨床統計や主要学術論文でも指摘されている通り、高齢者の上腕二頭筋長頭腱炎の約60〜70%に腱板断裂が併発しています。腱板(インナーマッスル)が傷ついて上腕骨頭を関節窩に引きつけられなくなると、骨頭が上方や前方へぐらつき、長頭腱への機械的挟み込み(インピンジメント)が何倍にも跳ね上がるためです。五十肩だと思い込み、「固まらないように無理やり回す体操」を続けると、傷ついた腱板や長頭腱にトドメを刺す事態に直結します。
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