柚木麻子『Butter』の木嶋佳苗モデル説と結末の深層を徹底解剖

今注目を集めている 柚木麻子『Butter』の木嶋佳苗モデル説と結末の深層を徹底解剖について、多角的な視点をご紹介しています。

週刊誌『週刊東洋』の記者・町田里佳は、世間を騒がせる連続変死事件の被告・梶井真奈子への接触を試みます。多くの記者が取材を断られる中、里佳はカジマナの美食へのこだわりに着目し、料理に関する質問を送ることで面会にこぎつけます。カジマナは里佳に対し、「エシレバターを乗せたご飯を今すぐ食べなさい」「私のレシピ通りに料理を作りなさい」と次々に課題を与えます。

これまで忙しさを理由にコンビニ食やサプリメントで済ませていた里佳は、カジマナの言葉に従って上質なバターと濃厚な料理を口にするうちに、味覚の快楽に目覚めていきます。体重が増加し、周囲の男性同僚や恋人・誠司からの冷ややかな視線に晒されながらも、里佳の内面では「世間が押し付ける細身の女性像」への違和感が急速に膨らんでいきます。

物語の中盤、里佳はカジマナの思想に深く感化され、精神的に支配されかけます。一方、里佳の親友であり専業主婦として生きる篠川怜子もまた、家庭内での孤独と自己肯定感の低さに苦しんでおり、カジマナの存在を介して里佳との関係に亀裂が生じます。カジマナは法廷で無罪を主張し続け、やがて拘置所からの逃走・工作を図るなど、その底知れぬ悪意とカリスマ性を剥き出しにしていきます。

迎えるクライマックスにおいて、里佳はカジマナの「他者を自分の支配下に置くことでしか自己を保てない孤独」を見抜きます。カジマナは決して女性解放の旗手などではなく、家父長制の価値観を誰よりも内面化し、それを逆手にとって男を搾取していたに過ぎなかったのです。

結末で里佳は、カジマナの呪縛から決別します。そして、一度は関係が破綻しかけた親友の怜子とともに、真夜中のキッチンで自分たちのためだけのバターたっぷりの料理を作り、分かち合います。「男のために作る料理」でも「社会に見せつけるための美」でもなく、自分自身の肉体と魂を満たすための食事。ラストシーンで描かれるのは、女性同士が手を取り合い、自分自身の人生のハンドルを取り戻す力強い再生の姿です。

鈴木 陽菜

鈴木 陽菜

テックライター兼ウェブディレクター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。

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