タールとニコチンどっちが悪い?有害性の違いと加熱式の盲点を徹底解剖
タールとは特定の単一化合物の名称ではありません。タバコの葉が不完全燃焼する過程で発生する、煙から水分とニコチンを除いた「粒子状有害物質の総体」を指す学術用語です。常温では黒褐色の粘り気のある油状液体であり、道路の舗装に使われるコールタールと似た性状を持つことからこの名で呼ばれています。
なぜタールはこれほど危険視されるのでしょうか。最大のタール発がん性理由は、煙が冷える過程で生じる多環芳香族炭化水素(ベンゾ[a]ピレンなど)やタバコ特異的ニトロソアミン(TSNA)といった、国際がん研究機関(IARC)がグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類する猛毒成分が凝縮されている点にあります。これらが気道上皮細胞のDNAに直接結合し、遺伝子変異を引き起こすことで、肺がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどの発生率を跳ね上げます。
さらに見逃せないのが、タールによる肺の汚れと呼吸器疾患の直結性です。1日に20本吸う喫煙者の肺には、1年間で約コップ1杯分(約100〜150ml)のタールが付着すると試算されています。気道の内側にある異物排出用の繊毛はタールによって麻痺・破壊され、自浄作用を喪失します。その結果、慢性的な咳や痰が続く慢性気管支炎や、肺胞が破壊されて呼吸困難に陥るCOPD(慢性閉塞性肺疾患)へと確実に進行していくのです。一度破壊された肺胞は現代医学でも再生しないため、不可逆的なダメージを刻み込みます。
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