阿波の土柱は本当にがっかり?奇岩崩壊の現在と夜の絶景を現地検証
阿波の土柱を語るうえで外せないのが、メインの景観を誇る波濤嶽(はとうがたけ)です。土柱は波濤嶽のほかに橘嶽、筵嶽、不老嶽など複数のエリアで構成されていますが、観光の中心であり国の天然記念物として保護されている中心地がこの波濤嶽です。
地質学的な成り立ちを紐解くと、約100万年前の吉野川の河岸段丘に堆積した砂礫層(砂と丸石が混ざり合った地層)が隆起し、雨水によって削られて誕生しました。頂上付近にある硬い巨石や地層が天然の「傘」となり、その直下にある柔らかい砂礫が洗い流されずに柱状に残る現象を「土柱(アースピラー)」と呼びます。この現象がこれほど明瞭な形状でまとまって現存する例は極めて珍しく、学術的な価値は世界最高峰と位置付けられています。
ここで多くの人が懸念するのが、「阿波の土柱はいずれ崩壊して消えてしまうのではないか」という疑問です。取材班の調査と地質関係者の記録によると、土柱は現在も年間数ミリ単位で風化と浸食が進行中です。実際に、台風や記録的豪雨の後には土砂の一部が崩落し、形状が微妙に変化している事実が確認されています。
しかし、行政がコンクリートで固めるなどの防護工事を行わないのは怠慢ではありません。人為的な補強を加えると国の天然記念物としての指定要件を満たさなくなるため、「自然のままの姿で推移を見守る」方針が採られているからです。つまり、今私たちが目にしている土柱の稜線は、二度と同じ形を見ることはできない一期一会の刹那的な造形美なのです。
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