「恋愛の教祖」古内東子の今 名曲誕生の裏側と色褪せぬ歌の力
古内東子の名を決定的に世に知らしめたのが、1996年にリリースされた7枚目のシングル「誰より好きなのに」だ。ドラマの挿入歌としても話題を呼び、現在に至るまで数多のアーティストにカバーされ続けているこの不朽のバラードは、劇的なドラマを描こうとして生まれたものではなかった。
「うれしくない あなたのやさしさ」という印象的なフレーズに象徴されるように、描かれているのは友人と恋人の境界線で揺れ動く切ない心理描写だ。当時、スタジオの制作現場では、より分かりやすいカタルシスを求める声もあったという。しかし、彼女は安易なハッピーエンドや分かりやすい悲劇に逃げることを拒んだ。誰もが経験したことのある、言葉にできない曖昧な痛みをそのまま音と言葉に落とし込むこと。徹底したリアリズムへのこだわりが生んだ奇跡的な一曲だった。
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