『少年と犬』結末ネタバレ解説!多聞が南へ走った理由と直木賞の真相
読者の誰もが息をのむクライマックスは、最終章「少年と犬」で描かれます。岩手からスタートした多聞の旅路は、実に5年以上の歳月と数千キロにおよぶ過酷な行程を経て、熊本県・阿蘇の麓へと到達しました。
多聞が狂おしいほどに南を目指し続けた理由、それは最初の飼い主である少年・光に会うためでした。東日本大震災の津波によって被災した光の一家は、震災のショックで感情と言葉を失った光の療養を兼ねて、遠く離れた熊本の親族を頼って移住していたのです。多聞は、かすかな匂いと本能だけを頼りに、ひたすら愛する飼い主を追い求めて列島を縦断していました。
熊本の自宅前で、ボロボロになり足を引きずりながら現れた多聞を見た瞬間、何年も言葉を発しなかった光の口から「タモン……!」という叫びが漏れ出します。奇跡的な再会を果たし、光の心には再び温かな光が灯りました。
しかし、物語は穏やかな大団円では終わりません。再会から間もなく、阿蘇の森へ散歩に出かけた光が野生の巨大な熊に遭遇してしまいます。光の絶体絶命の危機に、老いて傷だらけの多聞が迷わず立ち向かいました。多聞は自らの肉体を盾にして熊に食らいつき、壮絶な死闘の末に熊を撃退します。少年の命を守り抜いた多聞は、駆けつけた光の腕の中で、満足そうに息を引き取るのでした。
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