逃走の果てに掴んだ真実——映画『正体』が2026年の今なお世界中で揺さぶり続ける「確証バイアス」と「人間性」の真価
本作が指し示すもう一つのテーマ、それは現代社会に蔓延する「先入観の恐ろしさ」だ。指名手配写真の一枚、ニュース番組が報じる断片的な情報だけで、世間は彼を「冷酷非道な死刑囚」だと決めつける。一度ついたレッテルは、どれほど誠実に生きようとも剥がれることはない。
劇中で鏑木と接した人々は、当初は警察の情報を信じ込み彼を疑うものの、彼の行動やぬくもりに触れることで葛藤へと追い込まれていく。「目に見える報道」と「目の前にいる人間の真実」、どちらを信じるべきなのか。2026年、フェイクニュースや情報過多に晒される私達にとって、この葛藤はまさに他人事ではない。試写室を出た後も胸につかえ続けたのは、自分自身もまた「他者を勝手に決めつける加害者」ではないかという罪悪感だった。
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