「僕は太宰さんの文学が嫌いです」三島由紀夫が対峙した伝説の一夜
昭和21年12月。批評家・亀井勝一郎の自宅で開かれた文学者の集い。当時21歳の新進気鋭の作家であった三島由紀夫は、飛ぶ鳥を落とす勢いだった太宰治の目の前に着席した。
その場で三島が言い放った言葉は、文壇の伝説として今も語り継がれる。「僕は太宰さんの文学が嫌いです」。あまりにも唐突で不躾な青年の挑発。場が静まり返るなか、太宰は冷ややかに、しかしどこか優しさを孕んだ眼差しで返答した。「そうは言っても、こうやって来てるんだから、やっぱり好きなんだよな」。
このやり取りは単なる若気の至りでも、一方的な嫌悪でもなかった。三島にとって太宰の「弱さを売りにする姿勢」は到底許容できないものだったが、同時に目を背けることのできない巨大な存在だったのだ。昭和文壇の語り草となったこの一瞬には、日本文学の根幹を揺るがす美学の衝突が凝縮されていた。
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