ジャンヌ・ダルク名画の嘘と真実|後世の美化と生前の素顔を徹底追跡
ルーヴル美術館をはじめとする欧州の主要美術館に展示されているジャンヌ・ダルクの絵画には、ある共通点があります。それは、過酷な戦場に身を置きながらも、乱れのないブロンドの髪、陶器のように白い肌、そして女性らしい優美なシルエットを保っている点です。
この極端な美化が起きた背景には、19世紀フランスにおけるナショナリズムの台頭が深く関わっています。1870年の普仏戦争でプロイセンに手痛い敗北を喫したフランス社会は、国民を鼓舞し、引き裂かれた愛国心を統合するための強力なシンボルを必要としていました。そこで白羽の矢が立ったのが、かつて祖国を侵略者から救った救国の英雄、ジャンヌ・ダルクだったのです。
カトリック教会による復権運動や1920年の列聖(聖人に叙されること)に向けた動きも重なり、画家たちには「泥臭い農村出身の戦士」ではなく、「天の啓示を受けた純無垢な聖処女」としての描写が求められました。今日私たちが目にするドラマチックな名画は、史実の忠実な再現というよりも、時代が求めたプロパガンダの結晶として鑑賞するのが美術史の定説となっています。
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