北斎最晩年の奇跡!小布施・岩松院「八方睨み鳳凰図」と歴史の深層

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岩松院を語る上で欠かせないのが、本堂大間天井に描かれた「八方睨み鳳凰図(はっぽうにらみほうおうず)」です。江戸の浮世絵界を牽引した葛飾北斎が、晩年に小布施の豪商・高井鴻山(たかいこうざん)の招きで滞在した際、実に数え年89歳から90歳(1848年完成)にかけて描き上げた肉筆天井絵の最高峰と称されています。

間口約6.3メートル、奥行き約5.5メートルにおよぶ畳21畳分の巨大な画面には、画面狭しと翼を広げた巨大な鳳凰が極彩色で描き出されています。驚くべきは、本堂のどの位置に立って天井を見上げても、鳳凰の鋭い瞳が自分を真正面から睨みつけているように感じられる「八方睨み」の構図技術です。北斎が長年培った遠近法と陰影法、そして卓越した空間構成力が極限まで発揮されています。

さらに特筆すべきは、完成から170年以上を経た現在もなお輝きを失わない鮮烈な色彩です。北斎はこの大作を描くにあたり、中国から輸入された本辰砂(ほんしんしゃ)や孔雀石、金箔など、当時としては最高級の天然鉱物顔料を惜しみなく使用しました。その費用を全面的にバックアップした高井鴻山との深い信頼関係があったからこそ、この奇跡的な大作が信州の地に誕生したのです。

池田 達也

池田 達也

マネー&キャリアエディター

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。

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