六十余州とは?なぜ68国あるのか歴史の謎と広重の浮世絵・名酒を徹底解剖
江戸時代後期、幕末の1853年(嘉永6年)から1856年(安政3年)にかけて刊行されたのが、稀代の浮世絵師・歌川広重による『六十余州名所図会』です。名所江戸百景と並ぶ広重晩年の代表作として名高く、国内外の美術館や愛好家から極めて高い評価を集めています。
全作品一覧の構成は、五畿七道に属する68国それぞれから厳選した名所1図ずつに、将軍のお膝元である「江戸」の1図、そして目録(タイトル画)を加えた全70枚で成り立っています。
本作における最大の視覚的特徴は、浮世絵風景画で標準的だった横長構図を捨て、全面に「縦長(竪絵)」構図を採用した点にあります。縦構図を活かした天地のダイナミックな遠近法と、広重ならではの藍色(ヒロシゲブルー)や夕暮れのグラデーション(ぼかし技術)が惜しみなく投入されました。
代表的な傑作として知られるのが、『阿波 鳴門の風波』です。縦の画面いっぱいに渦巻く激しい白波と紺碧の海水の対比は、浮世絵史上に残る迫力を生み出しています。また、深い山中に架けられた危うい吊り橋をスリリングに描いた『飛騨 籠渡し』や、雪化粧した宮嶋の鳥居を描いた『安芸 厳島祭礼之図』など、現地取材が困難だった遠隔地については当時の地誌・案内記を巧みに再構成し、旅情を掻き立てる幻想的な名所空間を完成させました。
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