福島原発事故・吉田昌郎所長の真実|海水注入の真相と吉田調書が語る現場

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過酷事故の対応において、吉田所長の決断として最も知られているのが「海水注入の継続」です。淡水が枯渇した1号機の炉心を冷やすため、吉田所長らは消防車を用いて海水を注入するラインを構築し、3月12日19時04分に海水注入を開始しました。

ところがそのわずか20分後、東電本店からテレビ会議を通じて「官邸の理解が得られていないため、海水注入を一時中断せよ」との命令が下ります。当時、官邸に詰めていた東電フェローの武黒一郎氏から、菅直人首相(当時)への説明が済んでいないことを理由に強い待ったがかかったのです。

炉心の冷却を止めれば、圧力容器が破裂し、取り返しのつかない大惨事になることは技術者として明白でした。そこで吉田所長は、テレビ会議の画面に向かって「了解しました」と応じつつ、隣にいた復旧班長に対して「お前、絶対に注水を止めるな。俺がテレビ会議で何を言おうと絶対に止めさせない」と耳打ちし、注水を継続させました。

この独断専行の命令無視は、後に「現場の最高責任者としての的確な技術的判断」として国内外から高く評価されることになります。組織の官僚的な指揮系統よりも、眼前の物理現象と安全を最優先したこの判断こそが、最悪のシナリオを回避させた決定打となりました。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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