妹島和世の名作「大倉山集合住宅」湾曲する壁と革新の間取り解剖
建物の外側からは決して全貌を窺い知ることができない内部空間。今回の独自取材によって明らかになったのは、有機的にうねるコンクリート壁がもたらす、想像を超えた音環境と視線制御の巧みさだ。
敷地内に点在する中庭(パティオ)は、一般の通行人には非公開とされているプライベートな路地のような役割を果たしている。うねる壁に沿って歩を進めると、隣の住戸の開口部が絶妙な角度で視界から外れる。視線は交差しないのに、中庭に落ちる木漏れ日や風の抜け道だけが全員に均等に共有される。
「住み始めた当初は壁のカーブに家具の配置を迷いましたが、慣れると部屋の奥まで自然光が回り込む心地よさに圧倒されます」。ある居住者はそう語る。一般的な四角い部屋では角に影が溜まるが、ここでは光が湾曲した壁面を滑るように奥へと導かれ、日中は照明を点けずとも柔らかな明かりが空間を満たす。この視覚的・体感的な広がりこそが、計算し尽くされた住み心地の正体だ。
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