救国の英雄か冷酷な破壊者か?サッチャー「鉄の女」の実像と真相

救国の英雄か冷酷な破壊者か?サッチャー「鉄の女」の実像と真相とは一体何なのか? 背景や要点を丁寧に紐解いて紹介します。

1990年の退陣以降、一代貴族(男爵)に叙され貴族院に籍を置いたサッチャーでしたが、退陣後の歩みは決して平穏なものではありませんでした。マーガレット・サッチャーの晩年の真相を描く上で欠かせないのが、精神的支柱であった最愛の夫デニス・サッチャーの存在です。2003年にデニスが逝去すると彼女の精神的打撃は計り知れず、徐々に進行する認知症症状(アルツハイマー症状)と数回の軽微な脳梗塞がその記憶を蝕んでいきました。

かつて強烈なカリスマで世界を動かしたその政治家が、認知の霧の中で「夫がすでに他界していることを何度も思い出す悲しみ」に暮れていたという事実は、娘キャロル・サッチャーの回想録などを通じて世に知られることになります。

この晩年の痛々しい人間の現実を克明に描いて世界的な反響を呼んだのが、マーガレット・サッチャーを題材にした映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年公開)でした。名優メリル・ストリープが老いと孤独に直面するかつての最高権力者の脆い内面と全盛期の威厳を圧倒的な迫真性で演じ切り、アカデミー賞主演女優賞を受賞。鉄の鎧の下に隠された一人の女性の孤独と悲哀を浮き彫りにしました。

そして2013年4月8日、体調悪化のため療養していたロンドンの高級ホテル「ザ・リッツ」の一室で静かに息を引き取りました。享年87歳。公表された死因は脳卒中でした。

セント・ポール大聖堂で執り行われた準国葬にはエリザベス女王をはじめ世界高官が参列して厳かに追悼した一方で、旧産炭地や左派市民の間では映画『オズの魔法使』の劇中歌「鐘を鳴らせ!悪い魔女は死んだ(Ding-Dong! The Witch Is Dead)」が音楽配信チャートで急上昇し、路上で祝宴が開かれるという異常な光景が現出しました。死の瞬間に至るまで彼女は、国民の感情を極端に引き裂く存在であり続けたのです。

林 結菜

林 結菜

ライフスタイル編集者

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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