村上春樹『騎士団長殺し』結末の真相とは?イデアの正体と免色の謎を解く

村上春樹『騎士団長殺し』結末の真相とは?イデアの正体と免色の謎を解くとはどのようなものなのか? 背景や要点を整理してお届けします。

物語のタイトルであり、すべての発端となる絵画『騎士団長殺し』。この絵には、日本画壇の巨匠・雨田具彦の凄惨な過去が塗り込められていました。

若き日の具彦は、1930年代のウィーンに留学していた際、現地の反ナチス地下組織の女性と恋に落ち、ナチス高官の暗殺未遂事件に関与しました。計画は未遂に終わり、愛する女性は処刑され、具彦自身は当局の圧力により日本へ強制送還されます。

さらに同時期、具彦の実弟は徴兵されて日中戦争の前線へ送られ、南京事件における惨劇に関与させられた末に自決を選んでいました。個人を切り裂く国家の絶対的な暴力と、二度と戻らない大切な人々への想い。具彦は洋画の筆を折り、伝統的な日本画の技法を用いながら、飛鳥時代の装束に身を包んだ男女が血を流して争う異様な絵画本編を描き上げ、誰の目にも触れないよう封印したのです。

モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』で騎士団長が殺害される冒頭の悲劇を借りることで、具彦は自身の心に刻まれた「拭い去れない歴史の傷口」をキャンバスの上に閉じるしかなかったと読み取れます。

小林 直樹

小林 直樹

トレンドリサーチャー

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