人間国宝が宿す白磁の極限美!井上萬二窯の技と魂に迫る現地ルポ
井上萬二窯の作陶現場で繰り広げられるのは、土との壮絶な格闘であり、同時に親密な対話だ。天草陶石から精製される磁土は極めて繊細で、粘りが少なく、少しでも気を抜けば一瞬で遠心力に負けて崩れ去る。御年90歳を超えてなお轆轤の前に座る巨匠の指先は、まるで吸い付くように回転する白い塊をなで上げ、瞬く間に滑らかな曲線を立ち上げていく。
窯関係者が明かしてくれた秘話がある。萬二氏は納得のいかない作品を、たとえ窯から出た後であっても躊躇なく叩き割る。100個焼いて、自らの基準をクリアして世に出るのはわずか数点。妥協した作品を市場に出すことは己の誇りを捨てることと同義なのだ。この狂気にも似た厳格さこそが、名工の生み出す白磁に神聖なまでの透明感を与えている。
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