芥川賞作家・町屋良平の軌跡とおすすめ傑作選!身体が紡ぐ文学の真髄
町屋氏の名を不動のものにしたのが、2019年に第160回芥川龍之介賞を受賞した『1R1分34秒』です。デビューからわずか2年余り、3度目の候補入りでの栄冠でした。
本作の主人公は、デビュー戦を1R1分34秒KO勝ちで飾ったものの、その後は伸び悩み、崖っぷちに立たされた21歳のプロボクサー・ぼく。トレーナーのウメキとの対話や減量苦、スパーリングのなかで、自らの肉体と精神のズレを認識し直していく過程が描かれます。
驚嘆すべきは、格闘技における「身体感覚の解像度」です。パンチを放つ瞬間の関節の角度、ステップを踏んだ際の足裏の感覚、打撃を受けた脳の揺らぎといったミクロな物理現象を、極めて精緻な日本語で克明にスケッチしています。精神論や勝ち負けのドラマに終始しがちだった従来のスポーツ小説を根底から覆し、「肉体という乗り物を運転する感覚」を文学の領域へと昇華させた点が、芥川賞選考会でも極めて高く評価されました。
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