和彫り般若の真実|鬼の形相に秘めた女性の哀しみと最強の魔除けの由来
和彫りにおける般若を正しく理解するうえで欠かせないのが、能楽の世界における能面の由来と歴史です。般若の面は、古典芸能『葵上(あおいのうえ)』や『道成寺(どうじょうじ)』などに登場する、強い嫉妬や失恋の苦しみによって生霊・鬼へと変貌してしまった女性を表現するために創られました。『源氏物語』の六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)が光源氏への執心から生霊となる場面はその代表格です。
面打師(めんうちし)の僧侶・般若坊がこの面を完成させたことからその名がついたという説や、仏教の経典『般若心経』の智慧によって鬼となった怨霊を成仏させたことから名付けられたという説が語り継がれています。
般若の刺青に秘められた女性の怨念と真相を見つめると、単なる「怒り」だけではなく、「愛する人に振り向いてもらえない絶望と哀愁」が同居している点に気づかされます。実際、能面の般若は上半分を手で隠すと眉をひそめて激しく泣いている表情に見え、下半分を隠すと怒り狂って嗤(わら)っているように見える二面性を持っています。この激情と切なさの混在こそが、何百年もの時を超えて人々を惹きつける最大の魅力です。
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