東京ビッグサイトの天井に浮かぶ霧?コミケ雲の科学的真相を追跡
東京湾岸にそびえる展示施設で観測されたこの現象は、物理学的には紛れもない「局所的な相転移」であり、極めて珍しい屋内気象現象の一種である。都市伝説のように語られることが多いものの、その発生プロセスは極めてロジカルな熱力学の法則に従っている。
引き金となるのは、夏場に密集する数万人の身体から放出される莫大な潜熱(水蒸気)と顕熱(体温)だ。安静時でも人間は1時間あたり数十ミリリットルの水分を蒸発させるが、過密状態のホール内では数千リットル規模の水分が一気に空間へ供給される。この高温多湿な空気塊が浮力によってホールの天井付近へと上昇していく。
天井付近に滞留した湿潤空気が、冷房ダクトから吹き出す冷気や、屋根の断熱限界によって生じる急激な温度勾配に接触すると、空気の露点温度が一気に下がる。限界を超えた水蒸気は気体でいられなくなり、空間内に漂う微細なホコリや衣服の繊維、紙粉を「凝結核」として液化し、無数の微小水滴(エアロゾル)へと姿を変える。これが白く霞むモヤの正体だ。
ただし、「ホール内でスコールのような雨が降った」という俗説については、物理的には誇張と見てよい。微小水滴が重力によって落下するほどのサイズ(直径約0.5ミリ以上)に成長するには、強力な上昇気流と長時間の対流が必要であり、展示ホールの天井高(約17〜31メートル程度)では霧雨にすら達しない。天井の鉄骨結露が水滴となって落ちてきた体験が、雨の記憶として誤認された可能性が高い。
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