興福寺阿修羅像の憂いと三面六臂の真相|光明皇后の祈りと最新見どころ
阿修羅像の繊細な表情と優美な肉体美を可能にしたのが、奈良時代に流行した脱活乾漆造(だっかつかんしつぞう)という極めて高度な彫刻技法です。この技法は木彫や金銅仏とは全く異なる工程で作られます。
- 粘土で像のおおまかな原形(心土)を作る。
- その上に麻布を漆で何層にも貼り重ねて硬化させる。
- 背中などを切り開き、内部の粘土をすべて掻き出して空洞にする。
- 内部に木製の補強骨組みを組み、切り口を塞ぐ。
- 表面に木粉と漆を練り合わせた「木屑漆(こくそうるし)」を盛り上げ、細部の目鼻立ちや指先、衣の文様を精緻に仕上げる。
- 仕上げに彩色や金箔を施す。
中身が空洞であるため、像高153.4cmという等身大のサイズでありながら、重量は約15kg前後と極めて軽量です。この「軽さ」こそが、幾度にも及ぶ興福寺の火災の際、僧侶や民の手によって迅速に運び出され、焼失を免れて現代に国宝として遺された決定的な理由でもあります。
また、粘土と漆ペーストを用いる可塑性の高い技法であったからこそ、木彫の一木造では表現し得ない、しなやかな指先の曲がりや、微細な感情を宿す瞼の起伏が精密に表現できたのです。
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