深部静脈血栓症の看護|肺塞栓症を防ぐ観察項目と予防計画の全知識
エビデンスに基づく予防ガイドラインでは、入院・術前時における客観的な「DVTリスクアセスメント」の導入が標準化されています。世界的に信頼性の高い「Capriniスコア」や国内学会の危険因子層別化ツールを活用し、患者の年齢、悪性腫瘍の有無、手術時間、過去のVTE既往、BMI、長期臥床期間などを点数化してリスク度(低・中・高・最高リスク)を決定します。
このリスク評価に直結させた、病棟でそのまま活用できる「深部静脈血栓症・肺塞栓症予防の看護計画」の基本設計を以下に示します。
【標準看護計画】深部静脈血栓症(DVT)および肺血栓塞栓症(PTE)の予防と早期発見
看護問題:長期臥床および周術期侵襲に伴う静脈血栓塞栓症発症の潜在的リスク
看護目標:下肢静脈の血流障害を起こさず、血栓形成および肺塞栓症の兆候を早期に感知して速やかに対処できる
■ 観察計画(O-P:Observation Plan)
- 下肢の視診・触診:大腿・下腿の左右差(メジャー測定)、緊満感、圧痛・把握痛、局所熱感、皮膚色調(発赤・チアノーゼ)、表在静脈怒張の有無
- 呼吸器・循環動態:安静時および体動時のSpO2低下、頻呼吸(20回/分以上)、胸部違和感、急な頻脈・冷汗・血圧変動
- 予防デバイス装着状態:弾性ストッキングのしわ・めくれ、圧迫痕、踵・足背・腓骨頭周辺の皮膚血行・褥瘡・しびれの有無、IPC設定圧の作動確認
- 血液凝固データ:D-ダイマー値の推移、血小板数、PT-INR、APTTの確認
- 抗凝固療法時の出血徴候:穿刺部血腫、皮下出血、肉眼的血尿、下血、貧血進行度
■ ケア計画(T-P:Treatment Plan)
- 適切なサイズの弾性ストッキングを選択・装着し、1日最低2回(清拭時・就寝前等)は脱着して皮膚ケアを実施
- 術前・術中・術後の指示に応じた間欠的空気圧迫法(IPC)の安全な運用(下肢所見に異常があれば直ちに中止し医師報告)
- 術後早期離床プロトコルの推進:術後早期からのベッド上足関節自動運動(底背屈・回旋運動を1時間に10〜20回指導)、起立・歩行練習の段階的実施
- 十分な水分補給の管理(脱水による血液濃縮の防止)
- DVT発症が疑われた場合の【絶対ベッド上安静】指示の徹底(血栓の遊脱・肺塞栓を防ぐため歩行・徒手マッサージを厳禁)
■ 教育計画(E-P:Education Plan)
- 患者および家族に対し、下肢の血栓予防の重要性と足関節運動の具体的な動作を指導
- 弾性ストッキングの折り返しやしわが皮膚トラブルを招く危険性を説明し、違和感や痛みがあればナースコールで知らせるよう周知
- 「足が急に痛む」「張る」「息苦しさを感じる」などの異常兆候を自覚した際は、無理に動かず直ちに医療スタッフへ伝えるよう教育
特に「抗凝固療法 看護の注意点」として留意すべきは、DOACや低分子ヘパリン使用時の出血合併症の兆候監視です。血栓形成を防ぐ代償として、術創部や消化管からの出血リスクが高まるため、排泄物の色調観察やバイタルサインの推移をより厳密に追跡する必要があります。また、硬膜外麻酔カテーテルを留置している周術期患者においては、抗凝固薬の投与タイミングとカテーテル抜去の間隔を厳格に管理しなければ、硬膜外血腫による対麻痺という破滅的合併症を引き起こす点に最大限の注意を払わなければなりません。
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