なぜ80年代ヒット曲は世界を魅了するのか?名盤とアイドルの真実
ネット上の言説においてしばしば見受けられるのが、「80年代のヒット曲はバブル経済の金余りによって偶然生まれた、派手なだけの徒花である」という短絡的な誤解です。しかし、この見方は当時の音楽制作の実態を著しく見誤っています。
確かに、当時は1枚のアルバム制作に数千万円規模の予算が投じられ、ロサンゼルスやロンドンの一流スタジオでの海外レコーディングも珍しくありませんでした。しかし、巨額の資金が注ぎ込まれたから名曲が生まれたのではありません。当時の音楽界には、プロの作詞家、作曲家、編曲家、スタジオミュージシャン、そしてレコード会社の凄腕ディレクターたちが火花を散らす、極めて過酷で高度な「完全分業制の競争原理」が確立されていました。
コンペティションで何百曲もの候補から選び抜かれた珠玉のメロディに、松本隆や阿久悠といった言葉の達人が魂を吹き込み、後藤次利や林哲司、大村雅朗といった天才アレンジャーが1音の濁りもなく設計図を書き上げる。そこにスティーヴ・ルカサーやジェフ・ポーカロ(TOTO)、あるいは日本のトップスタジオミュージシャンたちが神業のようなグルーヴを吹き込む。この贅沢かつ狂気じみた情熱の結晶こそが、80年代ヒット曲の正体です。バブルの好景気は単なる追い風に過ぎず、核心にあったのは音楽人たちのプライドと妥協なき職人性でした。
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