熊肉の寄生虫「旋毛虫」の致死リスクと安全な加熱基準
野生鳥獣の肉を扱うジビエにおいて、熊肉が他の鹿肉や猪肉と決定的に異なるのが、旋毛虫(トリヒナ/Trichinella属)の感染リスクです。旋毛虫は線虫類の一種で、肉食獣や雑食獣の筋肉組織内に幼虫がシスト(被嚢)を形成して寄生します。
日本国内におけるジビエ熊肉食中毒事例として記録に残る代表的なものが、1981年および1982年に三重県や北海道で発生した集団感染事件です。さらに近年の2016年12月には、福島県の飲食店で熊肉のロースト(中心部が生に近い状態)を食べた客複数名が発熱や全身の発疹、筋肉痛を訴え、旋毛虫症(トリヒナ症)と断定される集団食中毒が発生しました。この事例では、冷凍処理されていた肉であったにもかかわらず幼虫が生存していたことが保健所の調査で確認され、全国の保健所および関係自治体に強い衝撃を与えました。
重症例では、筋肉組織に侵入した幼虫が心筋や中枢神経を冒し、心筋炎や脳炎、呼吸筋麻痺を引き起こして死亡に至るケースが海外の疫学調査でも報告されています。日本国内でも治療の遅れによって長期の後遺症(慢性的な筋肉痛や倦怠感)に苦しむ患者が確認されており、単なる胃腸炎レベルの食中毒とは一線を画す危険性をはらんでいます。
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