二兎を追う者は一兎をも得ずの真相|西洋の由来と現代の教訓を解説
日本人の多くが「漁夫の利」や「虎の威を借る狐」と同じ中国の故事成語だと思い込んでいますが、調査を進めると意外な元ネタ真相に行き当たります。この言葉は東洋の文献に源流があるのではなく、明確な西洋のことわざです。
起源は紀元前の古代ローマ時代まで遡ります。ラテン語の警句集や喜劇作家の記述に「Duos qui sequitur lepores neutrum capit(二羽の野兎を追う者は、どちらも捕らえられない)」という表現が残されており、16世紀の哲学者エラスムスが編纂した『格言集(アダギア)』にも採録されてヨーロッパ全土へ普及しました。英語表現としては、以下の成句が極めて広く知られています。
「If you run after two hares, you will catch neither.(二羽の野兎を追うなら、どちらも捕まらない)」
日本にこの概念が本格的に流入したのは明治維新以降のことです。開国に伴い、福沢諭吉をはじめとする知識人たちが西洋の文化や学問を精力的に輸入する過程で、英語のことわざ集が日本語に翻訳されました。日本の古来の言い回しである「虻蜂取らず」の語感を借りつつ、直訳調の「二兎を追う者は一兎をも得ず」という流麗なリズムを持つ訳語が生み出され、教科書や新聞を通じて瞬く間に国民的ことわざとして定着していったのです。
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