国保と社保の違いは?保険料・扶養・手当の格差と損得を徹底解剖
ネット上の情報やSNSの言説には、制度の本質を誤認した危険な言説が散見されます。その代表例が「フリーランスになっても、配偶者や親を自分の国保の扶養に入れれば安くなる」という誤解です。
断言しますが、国民健康保険に扶養家族という概念は存在しません。法律上の定義として、国民健康保険で扶養に入れない理由は、社会保険(健康保険法)と国民健康保険(国民健康保険法)の設計思想が根底から異なる点にあります。
社会保険は「主たる稼ぎ手(被保険者)がその家族を養う」という雇用者中心の思想に基づき、扶養家族に対する医療保障を事業主と社会全体で支え合う仕組みをとっています。これに対し、国民健康保険は「すべての国民が例外なく各自で保険に加入する」という国民皆保険の理念を担うセーフティネットであり、世帯全員がそれぞれ個別の「被保険者」として扱われます。
そのため、国保の保険証には全員の名前が主たる加入者として記載され、保険料は「世帯主」に対して世帯全員の合算額が請求されます。専業主婦であれ未成年の幼児であれ、加入している頭数ごとに一人ひとり「均等割額」が加算される仕組みです。「家族を扶養に入れたから追加保険料がゼロになる」という恩恵は、社会保険の被扶養者だけに許された特権なのです。
もうひとつの深刻な誤解が、「パートで社保に入ると手取りが減るから絶対損だ」という短絡的な回避論です。確かに月収8万8,000円前後のラインで社保に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料が毎月約1万2,000円〜1万5,000円天引きされ、手取り現金は一時的に減少します。
しかし、これは単なる掛け捨てのコストではありません。前述のとおり、将来受け取る老齢年金の基礎部分に報酬比例の「厚生年金」が確実に生涯上乗せされるほか、万一高度障害状態になった場合の「障害厚生年金(3級までカバーされ、最低保障額も手厚い)」や、本人死亡時の遺族厚生年金の受給権という強固な防壁を手に入れる投資でもあります。月々の手取り数千円の差と引き換えに、数千万円規模のリスクヘッジと老後資金の底上げを放棄しているという構造的視点を持たなければなりません。