勝鬨をあげる真の作法とは?エイエイオーの掛け声に潜む武士の掟
私たちが運動会や社内の決起会で何気なく行っている「せーの、エイエイオー!」という合図。実はこれ、伝統的な軍礼の観点から見ると決定的な誤りを含んでいます。武士の儀礼におけるエイエイオー掛け声の作法には、大将と将兵の間の明確な主従関係と対話構造が組み込まれていたからです。
武家故実の伝書によれば、勝鬨は「全員で同時に叫ぶ」ものではありません。軍を率いる主将(または鬨取と呼ばれる号令役)と、それに従う全軍の兵士たちによる、規律あるコール&レスポンスでした。
まず、大将が軍配や扇、弓を手に持ち、天地の神明に誓うようにして腹の底から「エイ! エイ!」と二度発声します。この「エイ」は、「鋭気」の「鋭」に通じ、兵たちを奮い立たせ、敵を圧伏したことを誇示する督励の合図です。これに対し、指揮下の将兵全員が一斉に右の拳を突き上げながら「オー!」と地響きのように応えます。この「オー」は肯定・承諾を意味する「応(おう)」であり、「仰せの通り、我が軍の完全なる大勝利である」という全軍の合意と服従を誓う返答でした。
さらに重要なのが、古文書に記された勝鬨三度の作法です。勝鬨は一度叫んで終わりではなく、必ず「エイ! エイ!」→「オー!」という一連の動作を厳格に3回繰り返すのが絶対の作法とされていました。
1度目の勝鬨は「天の神(天神地祇)」へ勝利を報告するため、2度目は「地の利」を得た大地と先祖への感謝のため、そして3度目は「人の和」を結び、命を賭けて戦った全軍の結束を未来へ繋ぐためという意味が込められていたと伝えられます。弓矢を持つ手は左手、拳を天に突き上げるのは右手と定められ、勝敗が確定する前に軽々しく勝鬨の声をあげることは、武士として最大の恥辱であり、全軍を破滅に導く不吉な禁忌と厳しく戒められていました。
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