なぜ他人に深く心を奪われるのか?感情移入の正体と脳の仕組み
対人援助の文脈において、感情移入を治療的ツールへと昇華させたのが、来談者中心療法の創始者カール・ロジャーズだ。ロジャーズは、セラピストがクライエントの世界を「あたかも自分自身のものであるかのように」感じ取りながらも、決して「あたかも(as if)」の性質を失ってはならないと戒めた。足を踏み入れつつも、自己の錨を下ろし続けること。これこそが健全な臨床的対話の条件である。
現代の日本心理学会が刊行する学術誌やシンポジウムにおいても、共感性尺度の細分化やソーシャルスキルとの関連性が盛んに議論されている。日本人特有の「空気を読む」文化は、高度な感情移入能力に支えられている反面、過度な同調圧力や自己喪失を生み出すリスクを孕む。相手の痛みに同調する力は、使い方を誤れば自己を侵食する両刃の剣となる。
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