なぜ2つ必要だった?『古事記』と『日本書紀』の決定的な違いを徹底解説
まず押さえるべきは、誰に向けて書かれたかという「ターゲット」の根底的な違いだ。太安万侶が編纂した『古事記』は、国内の豪族や天皇家に語り継がれてきた伝承(帝紀・本辞)を整理し、天皇家による統治の正統性を国内に知らしめる目的で書かれた。語り部である稗田阿礼の記憶を文字化したテキストには、生き生きとした感情表現や古くから伝わる歌謡が数多く盛り込まれている。
対して、舎人親王らが主導した『日本書紀』の視線は完全に国外を向いていた。当時の東アジアは、唐と新羅が同盟を組み、百済や高句麗を滅ぼすという未曽有の動乱期。日本(倭国)も白村江の戦いで大敗を喫し、いつ唐の侵略を受けるか分からない緊張感の中にあった。そこで誕生したのが、中国の正史と同じ編年体で書かれた『日本書紀』である。自国が独立した文明国であり、確固たる歴史と正当性を持つことを国外へアピールする最高レベルの外交文書だったのだ。
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