二葉亭四迷の代表作『浮雲』とは?言文一致と近代文学の原点を解剖
二葉亭四迷の代名詞とも言える『浮雲』は、1887(明治20)年から1889(明治22)年にかけて発表された日本近代文学の金字塔です。それまでの江戸戯作に見られた荒唐無稽な筋書きや勧善懲悪のパターンを完全に打破し、生身の人間の葛藤を冷徹に描写しました。
物語の主人公・内海文三は、要領が悪く実直な下級官吏です。情勢の変化に適応できず免職となり、同居していた叔母一家からの冷遇を受けるようになります。文三が思いを寄せていた従妹のお勢は、軽薄ながら出世街道を走る同僚・本田昇へと次第に心を移していき、文三は嫉妬とプライドの間で激しく苦悶します。この「何も行動を起こせない近代知識人の挫折と孤独」を描いたプロットは、当時の読書界に大きな衝撃を与えました。
本作が歴史的傑作と呼ばれる最大の要因は、言文一致運動を実践的な小説形式として結実させた点にあります。四迷は話し言葉に近い「〜だ」「〜である」調を採用し、人間の複雑な内面意識をそのまま文章化することに成功しました。口語を用いて自然な心理推移を追う試みは、山田美妙らの試みと並び、現代の日本語散文の基礎を築く決定打となりました。
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