トンネル効果の確率はなぜゼロじゃない?人間が壁をすり抜ける真相を徹底解説

トンネル効果の確率はなぜゼロじゃない?人間が壁をすり抜ける真相を徹底解説についての真相を徹底解説します。

トンネル効果は、決して黒板の上の数式やSFの空想ではありません。私たちの手元にあるスマートフォン、パソコン、さらには宇宙の太陽光に至るまで、あらゆる現代インフラの基盤となっています。

1. 江崎玲於奈氏の偉業「トンネルダイオード(エサキダイオード)」の原理

トンネル効果を人類が電子デバイスとして初めて応用したのが、日本の物理学者・江崎玲於奈(Esaki Leo)博士です。江崎氏は1957年、東京通信工業(現ソニー)の研究員時代に、不純物濃度を極限まで高めたpn接合半導体において、通常では電流が流れないはずの逆バイアス・低順バイアス領域で電子がトンネル効果によって障壁をすり抜ける現象を発見しました。

自著や当時の回想録において江崎氏は、「理論と実験の不一致を単なる欠陥とみなさず、量子力学の極限状態で起きる物理的実在として見つめ直したことがブレイクスルーにつながった」と語っています。この業績により、江崎氏は1973年のノーベル物理学賞を受賞しました。

2. スマートフォンの記憶を司る「フラッシュメモリ」

日常生活で最もトンネル効果の恩恵を受けているのが、SSDやスマートフォンのストレージとして使われる3D NAND型フラッシュメモリです。フラッシュメモリのデータ書き込み・消去は、「ファウラー・ノルドハイム(FN)トンネル効果」と呼ばれる仕組みを利用しています。ゲート絶縁膜(酸化シリコン薄膜、厚さ数ナノメートル)に電圧をかけることでポテンシャル障壁を傾け、電子をトンネル効果ですり抜けさせてフローティングゲート(浮遊ゲートやチャージトラップ層)に蓄積・放出させています。

3. 原子1個を観察・操作する「走査型トンネル顕微鏡(STM)」

1981年にゲルト・ビーニッヒとハインリヒ・ローラーによって発明された走査型トンネル顕微鏡(STM)は、トンネル効果の感度の高さを極限まで利用した計測機器です。極めて鋭利な金属探針(プローブ)を導電性試料の表面に1ナノメートル以下の距離まで近づけると、接触していないにもかかわらず探針と試料の間にわずかな「トンネル電流」が流れます。

トンネル電流の大きさは探針と試料の距離に対して指数関数的に変化するため、探針の高さがわずか0.01ナノメートル(原子半径の数分の一)変化するだけで電流値が劇的に増減します。この電流をフィードバック制御しながら表面をスキャンすることで、個々の原子が整列する様子を鮮明に画像化できるのです。

4. 太陽が光り続ける理由(恒星の量子核融合)

もしトンネル効果が存在しなければ、太陽はとっくの昔に冷え切って地球に生命は誕生していませんでした。太陽中心部の温度は約1,500万度ですが、古典熱力学で計算すると、プラスの電荷同士が反発し合う「クーロン障壁」を陽子が乗り越えて核融合を起こすには数億度以上の超高温が必要です。太陽の中心部では、陽子が持つ熱エネルギーがクーロン障壁より圧倒的に低いにもかかわらず、トンネル効果によって陽子同士が確率的に障壁をすり抜けて融合しています。その透過確率は陽子1個あたり「10億分の1」程度と極めて低いものの、膨大な数の陽子が高密度で衝突し続けることで、太陽は1秒間に数億トンもの水素を燃焼させ、安定した光を数億年にわたって放ち続けているのです。

加藤 愛美

加藤 愛美

エンタメ専門ジャーナリスト

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。

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