胸とお腹が逆に動く?シーソー呼吸の危険信号と救急判断基準
小児救急外来やNICU(新生児集中治療室)の臨床現場において、熟練の看護師や小児科医が最も神経をとがらせるのが、「保護者が自宅で呼吸困難の初期サインを見過ごし、深夜に限界状態で担ぎ込まれるケース」です。
救急搬送された保護者への聞き取り調査や看護記録を精査すると、異口同音に語られる証言があります。「熱は37度台でそれほど高くなかった」「泣き声を出していたから、まだ大丈夫だと思った」「寝ているときにお腹がよく動くのは赤ちゃん特有のものだと考えていた」という認識の齟齬です。
小児看護のフィジカルアセスメントにおいて、新生児や小児の呼吸苦を見分ける黄金律は「音」ではなく「皮膚と骨の露出度」にあります。服を着せたままでは、胸郭の沈み込みやお腹の奇異運動に気づくことが極めて困難です。現場の看護師は、呼吸が荒いと感じた際は必ず「服を脱がせて、鎖骨、肋骨、みぞおち、お腹の連動性を目視すること」を強く推奨しています。
また、重症化の前兆として見逃されやすいのが「呻吟(しんぎん)」です。息を吸うときではなく、息を吐き出す瞬間に「ウー、ウー」と小さく唸るような声を漏らす現象は、閉鎖しかけた肺胞を自らの声門を絞って内圧を高め、なんとか押し広げようとする無意識の生体防御反応です。この呻吟とシーソー呼吸が合わさった場合、医療現場では「数十分以内に自発呼吸が力尽きる可能性がある」と判断され、即座に気道確保や人工呼吸器の準備が進められます。
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