年金繰り下げ率最大84%の罠!利用者が少ない理由と損益分岐点を検証
これほど強力な増額制度でありながら、なぜ世間では普及していないのでしょうか。厚生労働省の「年金制度基礎調査」や年金事業年報の最新統計を精査すると、驚くべき実態が浮き彫りになります。
公的年金受給権者のうち、実際に繰り下げを選択している年金繰り下げ受給割合は、老齢基礎年金で約2.5%〜3.0%、老齢厚生年金に至っては約1.5%〜2.0%程度に過ぎません。実に9割以上の国民が「原則通り65歳」から受給しており、繰り上げ受給を選択している割合(約7〜8%)と比較しても半分以下の水準に沈んでいます。
金融機関のシニア相談窓口やファイナンシャルプランナーへの取材現場では、次のような相談者の本音が頻繁に聞かれます。
「70代半ばまで年金を一円も受け取らずに我慢して、もし受給開始直後にポックリ逝ってしまったら、これまで支払ってきた保険料がすべて掛け捨て同然になってしまうのではないか。そう考えると怖くてとても先延ばしにできない」(都内在住・68歳元会社員男性の手記より)
制度を知らないから利用しないのではなく、制度の詳細と自身のリスクを天秤にかけた結果、「あえて利用しない」という合理的な選択を下している人が圧倒的多数を占めているのです。さらに、受給者の心理だけでなく、次節で解説する「日本の社会保障制度特有の構造的ペナルティ」が繰り下げの旨味を激しく削ぎ落としています。
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