『スモール・アックス』全5作の衝撃実話と見どころを徹底解剖
『スモール・アックス』は連続ドラマではなく、それぞれが1本の独立した映画として完結する全5エピソードで構成されています。スティーヴ・マックイーン監督が自身のルーツであるロンドンのカリブ海系コミュニティの記憶を丹念に掘り起こした各作品の概要とキャストを整理します。
第1作『マングローブ(Mangrove)』は、1970年にノッティングヒルで起きた歴史的裁判「マングローブ・ナイン事件」の実話を映画化した重厚な法廷劇です。黒人たちの交流拠点だったレストラン「マングローブ」への警察による執拗な家宅捜索に対し、平和的デモを行った9人が暴動扇動罪で不当逮捕されます。法廷で自ら弁護に立ち、司法の構造的差別を暴いたフランク・クリッチロウ役をショーン・パークス、ブラックパンサー党幹部アルシア・ジョーンズ=ルコワンド役を『ブラックパンサー』のレティーシャ・ライトが圧倒的な熱量で演じました。
第2作『ラヴァーズ・ロック(Lovers Rock)』は、シリーズ唯一の完全フィクションであり、1980年の西ロンドンで開催された一夜のハウスパーティーを描いた音楽叙情詩です。当時、黒人が一般的なナイトクラブへの入場を拒絶されていた背景から生まれた「ブルース・ダンス(家庭内パーティー)」を舞台に、アマラー=ジェイ・セント・オービン演じるマーサたちの恋とダンスが高揚感たっぷりに映し出されます。
第3作『レッド、ホワイト&ブルー(Red, White and Blue)』は、『スター・ウォーズ』シリーズで知られるジョン・ボイエガが主演を務めた実録ドラマです。白人至上主義が色濃く残るロンドン警視庁に敢えて飛び込み、組織内部から変革を試みた実在の警察官リロイ・ローガンの孤独な戦いと父子の葛藤を描き出し、ボイエガは第78回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞しました。
第4作『アレックス・ウィートル(Alex Wheatle)』は、不遇な児童養護施設での生活や1981年のブリクストン暴動を経て投獄され、刑務所内で読書と出会って国民的作家へと上り詰めた実在の小説家アレックス・ウィートルの青春時代をシェイ・コール主演で映像化しています。
第5作『エデュケーション(Education)』は、1970年代のイギリス教育界で公然と行われていた「知能指数が低い」という口実で黒人の子どもたちを特別支援学校へと隔離した制度的人種差別の実態を告発した作品です。12歳の少年キングスレー(ケニヤ・サンディ)とその教育機会を守るために立ち上がった母親たちの連帯が描かれます。