六本木ヒルズを創った男・森稔の真実|波乱の生涯と都市再生の遺伝子
森グループを語るうえで避けて通れないのが、1999年の森ビルと森トラストの分割劇です。創業者であり世界的大富豪番付でもトップに立った父・森泰吉郎のDNAを受け継ぎながら、次男の森稔と三男の森章は、水と油のように対照的な経営スタンスを持っていました。
慶応大学教授などを務めていた長男・森敬が1990年に病没した後、森グループの舵取りは森稔と森章の二人に委ねられます。しかし、二人の目指すベクトルは完全に食い違っていました。
- 兄・森稔(森ビル):「都市再生の理想を追い求める挑戦者」。莫大な借入金と長期の歳月を賭けてでも、エリア一帯を再開発して複合都市を創造する開発型ビジネスを志向。
- 弟・森章(現・森トラスト):「研ぎ澄まされた財務規律を誇る現実主義者」。巨大リスクを伴う長期再開発よりも、安定したキャッシュフローを生み出す不動産運用やホテル事業、堅実な資産効率を追求。
どちらが正解という話ではなく、経営哲学の根本的な相違でした。六本木ヒルズという未曾有の巨額投資プロジェクトを前に、リスクヘッジを巡る意見の隔たりは埋まらず、1999年にグループは事実上分割。旧森ビルから森トラスト(当初は森ビル開発)が完全に独立する形を取りました。この分裂により、森稔は自らの全責任において、理想の都市づくりへさらにアクセルを踏み込むことになったのです。
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