救国の英雄か冷酷な破壊者か?サッチャー「鉄の女」の実像と真相

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サッチャー政権の苛烈さを象徴する最大の事件が、1984年から翌年にかけて続いた「炭鉱労働者による大ストライキ」です。当時、エネルギーの中心が石炭から石油や天然ガスへと移行する中、全国炭鉱庁は20の不採算炭鉱の閉鎖と2万人の人員削減計画を発表しました。これに猛反発した全英炭鉱労連(NUM)のカリスティックな指導者アーサー・スカーギルが即座に全国ストライキを指令したのが、激しい炭鉱ストライキの理由でした。

かつて1970年代に炭鉱労働者の大規模な抗議活動によって当時の保守党政権が退陣に追い込まれた苦い記憶を抱えていたサッチャーは、事前の周到な準備を進めていました。発電用石炭を事前に備蓄し、警察力を全国規模で動員して供給ルートを確保した上で、一切の妥協を拒否したのです。ピケットラインでは機動隊とピケ隊が激突し、負傷者や逮捕者が続出する流血の事態となりました。

1年に及ぶ消耗戦の末、給与を失い生活困窮に追い込まれた炭鉱労働組合は敗北を認め、ストライキは終結しました。かつて国家首脳を揺るがすほど強大だった労働組合の政治的影響力は粉砕され、政権は構造改革の最大の障壁を排除することに成功します。この過程で放たれた数々のマーガレット・サッチャーの名言は、今も語り草となっています。

「方針転換をしたいならご自由に。しかし『鉄の女』は引き返しません(You turn if you want to. The lady's not for turning.)」
「そもそも『社会』などという抽象的な実体は存在しない。個々の自立した男女があり、家族があるだけだ(There is no such thing as society. There are individual men and women, and there are families.)」

彼女の言葉は、自己責任を何よりも重んじるサッチャリズムの思想を純度100パーセントで体現していました。しかし、頼れる産業を失ったイングランド北部やウェールズ、スコットランドの旧炭鉱街は急速に荒廃し、何世代にもわたる失業の爪痕を残すことになります。

林 結菜

林 結菜

ライフスタイル編集者

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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