犠牲フライとは?打率が下がらない理由とタッチアップ成立条件の真相
野球ファンが最も疑問を抱くポイントが、「アウトになったのになぜ打率が下がらないのか」という疑問です。通常の凡退であれば、例えば4打数1安打(打率.250)の打者が凡退すると5打数1安打(打率.200)へと低下します。しかし、犠牲フライを放った場合、打率はまったく下がりません。
この秘密を解き明かす鍵は、野球規則における「打席数(PA)」と「打数(AB)」の明確な区別にあります。
打率の計算式は以下の通りです。
打率 = 安打数 ÷ 打数
打者がバッターボックスに入って結果が出るたびに「打席数」は1つ増えます。しかし、「打数」の計算においては、四球、死球、犠打(バント)、そして犠牲フライは打数から除外される規定になっています。つまり、犠牲フライを打った打者の個人成績は「0打数0安打1打点」という扱いになるため、計算式の分母が増えず、打率が維持されるのです。
なぜこのような特例が設けられているのでしょうか。それは、自己を犠牲にしてチームに得点をもたらした献身的なバッティングに対し、個人の打率を下げてペナルティを与えるのは著しく公平性を欠くという「選手のチーム貢献を正当に保護する思想」が根底にあるためです。MLBでは過去に犠牲フライのルールが廃止と復活を繰り返した歴史がありますが、1954年に現行の規定として再導入されて以来、打者の評価を守る重要指標として定着しています。
ただし、セイバーメトリクスや近代野球のデータ分析において見逃せない「出塁率の罠」が存在します。公認野球規則における出塁率の計算式は次のようになっています。
出塁率 =(安打 + 四球 + 死球)÷(打数 + 四球 + 死球 + 犠飛)
計算式を見ると分かる通り、分母に「犠飛」が含まれています。打者は一塁に出塁していないため分子は増えませんが、分母だけが1増えるため、犠牲フライを打つと出塁率は確実に下がります。犠打(バント)は出塁率の分母にも算入されないのに対し、犠牲フライが出塁率を押し下げる仕様になっている点は、熱心なプロ野球ファンでも見落としがちな盲点と言えます。